16年11月の月例会

●内  容: 山でケガや病気になったら
●講  師: 日本登山医学会理事・日本山岳会理事
野口いずみ氏
●開催日時: 2016年11月24日(木) 18:30-20:40
●開催場所: ハロー貸会議室水道橋
 

 
山登りで起こりやすいカラダのトラブル、怪我や病気の対処についての講義。
  • 登山は健康に良いか?
    良い点:心肺機能を高める、病気を予防、精神的ストレスの発散、生活に目的意識。
    注意点:過度な身体的・精神的負担をかける場合がある。
    結論:良い点が多いが、注意も必要。
     
  • 登山で注意すべき病気
    病気は遭難の二番目の原因。死因に占める突然死の割合が山では平地の約2.5倍。そのうち6割が心臓病、2割が脳卒中。運動による血圧上昇、心拍数の増加で、安全限界までの余裕が少ない。寒さや気圧の低さで心筋梗塞が起こりやすく、高地では低酸素症も加わる。
     
    1. 循環器系の病気
      高血圧の人は、降圧薬の内服を開始した直後に注意。
      心臓に酸素が不足して起こる胸の痛みが虚血性心疾患。安静・保温し冷水を飲むことが収まる場合があり、ニトログリセリンやアスピリン(アセチルサリチル酸)も有効。症状が改善しない場合は急いで救援(ヘリや救急車)要請すること。
       
    2. 脳卒中
      症状は、ろれつが回らない、めまい、強い頭痛、動きの左右差、手足に力が入らないなど。脳梗塞や脳出血・くも膜下出血の場合は病院での対処が必要なので、救助要請。数分から数時間だけ症状が続く一過性脳虚血発作の場合は、治療を受けないと5%は1年以内に脳卒中を起こす。
      下山後のアルコールと脱水に注意。入浴は血管拡張作用が強いため、脱水を補正した後にすること。
       
    3. 糖尿病、肥満
      低血糖発作に注意する。冷や汗、手足の震え、動悸、吐き気、脱力感、意識消失の症状が起こったら糖分を補給する。山ではノンカロリードリンクはNG。肥満は膝や腰への負担を大きくするので減量が必要。
       
    4. 動悸と息切れがある場合の対策
      原因には、体力不足、呼吸循環器系の病気、低体温症・凍傷・熱中症が考えられ、それぞれ対策が異なる。
       
  • ケガへの対処
    手早くRICE処置を行う。RICEとは、Rest:安静、Icing:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上、そしてS:安静が加わる。基本となるのがテーピング。
     
  • 水分の摂り方
    脱水しないように注意。下記の計算が目安となる。
      脱水量(g)=5g×体重(kg)×時間(h)
     
        
講師の野口いずみ氏 
 
         
         



野口いずみ氏の著書
       
実例から学べる!
山の病気とケガ
山と渓谷社刊
山登りトラブル回避&対処マニュアル
大泉書店刊
安全登山の基礎知識
スキージャーナル刊

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